大書院のうち「源氏の間」に四点の瓦が展示されています。

これらの瓦は、
 大書院で使われていたものですか?
瓦の模様には、
 どのような意味があるのですか?

といった質問をいただくことがあります。

源氏の間瓦IMG_2416

答えは、「かつて篠山城で使われた瓦といわれています」
という、いささか歯切れが悪いものです。
復元された大書院の屋根は、建築当時の姿である杮葺となっています。
しかし、古写真や焼失した昭和十九年ころの屋根は瓦葺でした。
展示している瓦が、はたして江戸時代のものか特定はできませんが
それぞれ篠山城の大書院を飾るにふさわしい意味を持っています。
葵の瓦
江戸幕府将軍・徳川家の「三つ葉葵」紋の瓦
篠山城は徳川家康の命により、天下普請で築かれた城郭であり
初代の城主は家康の実子といわれる松平康重でした。
この瓦は、そのような歴史を雄弁に語ったものといえます。
青山紋瓦
篠山藩主青山家の定紋「無紋銭」の瓦
篠山城は松平三家、そして、青山家が城主をつとめました。
城内でもっとも格式の高い建物である大書院には
藩主家の定紋を描いた瓦も用いられたことでしょう。
桃の瓦
「桃の実」を浮き彫りした瓦
桃の実は、魔除け、強い霊力をもつ果実といわれます。
古代の中国では、病や邪気を払い、不老長寿の力を与えてくれる
「仙果」として珍重され、日本でも『古事記』にイザナギが
桃の実で危機を脱したことが記されています。
獅子牡丹瓦
「獅子に牡丹」を浮き彫りした瓦
獅子は百獣の王、牡丹は百花の王といわれ、動物と草花の王を
組み合わせた非常に豪華で縁起のよい文様。また、
「獅子に牡丹」の図柄は武将達に好まれ武具にも用いられました。

このように、展示している瓦の一つ一つに意味があります。
そして、それぞれ篠山城内でもっとも格式の高い建物であった
大書院にふさわしい瓦揃いといえそうです。
入館されたときには、ぜひ、瓦群をジックリご覧ください。